平成24年01月の読書記録

1月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:3185ページ
ナイス数:22ナイス

ルポ 下北核半島――原発と基地と人々ルポ 下北核半島――原発と基地と人々
青森県が抱え、県民ほとんどが知らずに過ごしている原子力関連施設と軍事施設と言う「ハイリスク施設」セット。東日本大震災福島原発事故の後に沈黙を続ける核燃サイクル関連施設の闇と「トモダチ作戦」さえも有事の際に米軍と自衛隊が共同作戦を行うシミュレーションとして機能したと捉える視点。嫌なものを僻地に押し付けている日本の現状を浮かび上がらせる一冊。しかし、遠隔の地に押し付けて見えなくなったフリをしても、日本は狭過ぎると言うのがフクシマ以後、思い知った現実。
読了日:01月01日 著者:鎌田 慧,斉藤 光政
充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)充たされざる者 (ハヤカワepi文庫)
これは怪作。旅行の車中で一気に読めるかと思いきや予想外の時間をとられてしまった。登場人物たちは別の一面では語り手の人生の断面であり、夢とも記憶ともつかぬまま次々と場面が移り変わっていく。人生をCTscanで撮影し、連続切片として流し見をしたりザッピングしたりしているようで、乗り物酔いにも似た生理的な反応まで引き起こされる。全くジャンルは違うが神林長平「猶予の月」で事象の選択をすることにより擬動している登場人物たちに付いていく感覚に近い。長大な本作を読み切った後に丁寧な訳者解説を読んで得心がいった点も多々。
読了日:01月09日 著者:カズオ イシグロ
人獣細工 (角川ホラー文庫)人獣細工 (角川ホラー文庫)
表題作では主人公の悲嘆をよそに、父の研究の無意味さに目が行ってしまった。「豚に豚の組織を移植しても学術的に意味はないのではないか」という素朴な疑問。「吸血狩り」の真相は大方のヒトが気付く通りなのだろうけれど、恐ろしいのは「初めて吸血鬼を殺したのも。。。」と結ぶ1行。このあとも「彼」は殺戮を続けているのだ。「本」も変にスラップスティックな展開を持ち込んでしまい、惜しい。本気でホラーにする気があれば「リング」より恐ろしい展開に持ち込むことも可能だったのに。貴方が読んでいるこの一冊こそが、「本」なのです……と。
読了日:01月11日 著者:小林 泰三
脳髄工場 (角川ホラー文庫)脳髄工場 (角川ホラー文庫)
表題作が一番駄作。脳髄を埋め込む手技があまりに「不潔操作」でリアリティが皆無だったため、まったく没入できなかった。さらに後半の「トンデモ」展開が、あまりにもとってつけた感じで全く別の路線に移行してしまったため消化不良感がとてつもなく大きい。他の掌編はライトホラーからSFまで幅広く、アイディア一発のショートショートとして、なかなか面白く読めた。C市は早々にネタが割れてしまうので、興醒めではあった。
読了日:01月13日 著者:小林 泰三
わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)わたしたちが孤児だったころ (ハヤカワepi文庫)
両親を相次いで誘拐、略取され「孤児」となった男児が見知らぬ故郷である英国に連れ帰られ、長じて名探偵となって両親の事件を解決する話。粗筋をまとめてしまえば、たったこれだけなのにイシグロにかかると本作のようにめくるめく物語になる。主人公であり語り手のパフィンは探偵らしく誠実に語ろうとしているのだけれど、内容が幼少期の記憶であり、衝撃的な事件であり、悪夢のような戦場での体験なので、イシグロ作品でおなじみの「信頼できない語り手」になってしまう。戦場の場面では混迷の度が著しく、ライダー氏になったかと思ってしまった。
読了日:01月20日 著者:カズオ イシグロ
わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
イシグロ作品は「信頼できない語り手」が特徴的なのだけれど、本作の語り手は非常に誠実に自分の想い出を語ってくれる。しかし、読者にとってはどこかもどかしさが感じられてしまう。平易な言葉で語られる、ありふれた学園生活の活写に思えるのだけれど、何かしら情報の欠落があるように思えてならない。読み進めていくことにより、作品中の世界自体が信頼できないと言うことに気付かされる。基本的な筋立ては了悟するとして、彼らが従容と「提供」を受け入れていることや提供が4回まであり得ることなど、私たちの世界とは地続きではない感しきり。
読了日:01月25日 著者:カズオ・イシグロ
京極夏彦の謎京極夏彦の謎
野崎六助京極夏彦読本・超絶ミステリの世界」と同時期に購入し、そのまま積ん読していた本。今回、ほぼ同時に読了。野崎作品は立派に独立した評論になっているが、こちらの本は「ガイドブック」にあくまでもとどまっており、内容も皮相的で菲薄だった。
読了日:01月26日 著者:『京極ワールド』研究会
京極夏彦読本超絶ミステリの世界京極夏彦読本超絶ミステリの世界
良い評論だと思いました。京極堂シリーズでは、私も著者と同意見で、「絡新婦の理」が最大傑作で、「魍魎の匣」が続くと評価していた。本評論では京極堂シリーズを一作ごとに解体し、背後にある「双子」や「女性原理」という物語の基本構造を暴き、何故評価がこういう順番になるのかを解き明かしてしまう。妖怪小説、推理小説の癒合という京極夏彦のケレンに惑わされることなく、物語と作者の関係さえ一作ごとに変化していると喝破する。「信用出来ない語り手」というモチーフさえも更に何通りものバリエーションがあるとは指摘されるまで気付かず。
読了日:01月30日 著者:野崎六助

2012年1月の読書メーターまとめ詳細
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平成23年12月の読書記録


タカイ×タカイ (講談社ノベルス)タカイ×タカイ (講談社ノベルス)
初期には心理トリックやミスディレクションを多用していた森博嗣だが、徐々に力業の物理トリックばかりになって来た。もとより元・本職の専門領域からすれば、工学・力学的技は得意なのでしょう。そういう側面より、トリックなんて大したことではないというアンチ・ミステリ的な主張が見え隠れしている気もする。Gシリーズがほとんど「自殺」だったことやV最終作の〆方からは。しかし、森作品には正体不明の私立探偵やら手品師がかなり多く出演してくる。そのうちの何人かは同一人物だったり、他の登場人物の別の顔だったりするのでしょうか。
読了日:12月01日 著者:森 博嗣
目薬αで殺菌します (講談社ノベルス)目薬αで殺菌します (講談社ノベルス)
Xシリーズを駆け足で3冊読み終えたところで、本書に戻って来た。Gシリーズでは単発の殺人事件ではなく、組織的犯罪に焦点が移っている。テロであったりメッセージを内包した連続自殺であったり。本書でも殺人事件が発生しているが、これは本当に偶然絡んだだけという筋立て。名は体を表すと言うとおり、本当に捉えどころがない海月くんですが、このまま表舞台から消えるとは思えない。次に舞台に立つときには四季側に立っているのかもしれない。一方の探偵さんも地味に「食えない」キャラとして頑張っている。しかし、いかんせん探偵が多過ぎる。
読了日:12月02日 著者:森 博嗣
カクレカラクリ An Automaton in Long Sleep (MF文庫ダ・ヴィンチ)カクレカラクリ An Automaton in Long Sleep (MF文庫ダ・ヴィンチ)
ドラマを観た記憶はあったけれど、本作を読み進めている最中は「森博嗣キャラクター」で上書きされて、いつもの会話が展開されてしまう。しかし、主演女優の解説(談)を読んでしまったが最後、キャラクターが脳内固定されてしまう恐ろしさ。小説版では、彼女とは結構イメージが違う気がしていたのだけれど、もう駄目だ。恩田陸六番目の小夜子」はもう完全に彼女で脳内再生されてしまう。ともあれ、ドラマが前提だったせいか森博嗣にしては簡単、親切すぎるヒントだった。こんな感じのモリ・ライトももっとあってよいかも。
読了日:12月07日 著者:森 博嗣
忌憶 (角川ホラー文庫)忌憶 (角川ホラー文庫)
「垝憶」を叙述トリックのミステリとして読む。語り手を本人が思っている通りの人物だとすると、登場人物が1人足りない。語り手が実は被害者と入れ替わっていると考えると途中で出てきた人体エピソードが邪魔になる。なかなかやっかいだ。別の短編集に入っていたSF仕立ての話と相同の作品。SF的にはメモリカードの入れ換えで行っていた操作をアナログなノートの書き継ぎで行っている。書き写しという手間がかかる分、リアリティというか身につまされ方は本作の方が上だと感じた。一方、複雑なプロットを組むのにはメモリカードの方が簡単か。
読了日:12月08日 著者:小林 泰三
ぷちます!(2) (電撃コミックス EX)ぷちます!(2) (電撃コミックス EX)
読了日:12月10日 著者:明音,バンダイナムコゲームス
戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)戦闘妖精・雪風(改) (ハヤカワ文庫JA)
「改」になる前の版を読んで以来の再読。学習を積み重ねることで自己の外部記憶となる機械知性を育てるという基本プロットは火星シリーズのRABなどに通底する神林長平の得意技。しかしRABが言語による対話を基本とするシステムであるのに対して、雪風は非言語的なやりとりをヒトー機械知性間でやりとりすることで発展していくところが大きく違う。続編に進むにつれ、思弁的側面が大きくなっていくのだけれど、本作では単純に「超音速で戦闘機動する機体がいきなり反転して、背後から迫ってくる敵を迎え撃つ」なんてシーンに痺れるのも良い。
読了日:12月12日 著者:神林 長平
グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)グッドラック―戦闘妖精・雪風 (ハヤカワ文庫JA)
姿を現さないJAMを鏡面として、機械知性・雪風と機械に近いと揶揄されるけれど人間である深井零の相克を描くのかと思いきや。JAMそのものが機械とも人間とも違う存在として立ち現れて来る展開。知性とコミュニケーションについての動的考察。時空を操るほどの力を持つJAMは、ソラリスの海以上にコミュニケート不能の存在だと思っていたけれど、どうやらそうでもない様子。戦力的には圧倒的に有利なJAMが人間に気付き、理解しようとする動機についても興味津々。その動機が人間に理解できるようなモノかはさておき。
読了日:12月16日 著者:神林 長平
アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風アンブロークンアロー―戦闘妖精・雪風
どんどん哲学的、思弁的になっていく。むしろ初期の活劇色が薄くなり神林長平の本質が透けて見えてきているのかもしれない。リアルな世界は事象の選択により、主体によって違った見え方をする辺り「擬動」出来そうでもある。前半の語り手が入れ替わりながら事態の描写をする下りが、雪風の「力」だったと明かされ、ついに機械知性が「言葉使い師」になってしまった。最後まで描ききって欲しいけれど、一方ではフェアリーにラジェンドラを持ち込んでCDSをぶちかましたい衝動にもかられてしまう。
読了日:12月28日 著者:神林 長平

2011年に読んだ本まとめ
読書メーター

平成23年11月の読書記録

11月の読書メーター
読んだ本の数:13冊
読んだページ数:3635ページ
ナイス数:34ナイス

ぷちます! 3 (電撃コミックス EX 135-3)ぷちます! 3 (電撃コミックス EX 135-3)
スペパプブさん、親切なのに食用なの(^^;
読了日:11月02日 著者:バンダイナムコゲームス,明音
まおゆう魔王勇者 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」 (1) (角川コミックスエース)まおゆう魔王勇者 「この我のものとなれ、勇者よ」「断る!」 (1) (角川コミックスエース)
最初に読んだのが「ゆかい」版だったので、思いっきり正統派のこちら版に違和感しきり(^^;
読了日:11月04日 著者:石田 あきら
完全版 摘出―つくられた癌 (新風舎文庫)完全版 摘出―つくられた癌 (新風舎文庫)
登場人物の行動が意味不明すぎる。内部告発するつもりだったら「つくられた癌」なんかつくらず、そのまま告発すれば良いだけ。実際に癌ではない健常側を摘出してしまっているのだから、申し開きのしようがない。何故、変な工作をしなくてはならなかったのか理解不能。なぜ危ない橋を渡る必要があったのか全然解らない。一方の被害者側も、あんな妙なところで矛をおさめることが出来るとは思えない。掌返しで一気に態度を豹変させる愛人・看護婦の心理状態についても同意いたしかねる。医療面の描写はまだしも、基本的な人間描写の面がいただけない。
読了日:11月06日 著者:霧村 悠康
ぷちます!(2) (電撃コミックス EX)ぷちます!(2) (電撃コミックス EX)
スペパププさんについて調べるために再読(^^;
読了日:11月08日 著者:明音,バンダイナムコゲームス
火車 (新潮文庫)火車 (新潮文庫)
経済面では先が見えない昨今、「信用創造」でイケイケだった本書の時代背景とは全く逆なのかもしれないが、経済的に困窮する人が溢れ返るという点では共通する点も多い。本書ではカード地獄から人々を救う役割として描かれる弁護士さんだが、現在地またに溢れるCMの多さから考えると新たな稼ぎ頭として躍り出ている感もあり。新たな「火車」の軸となり得るとCMを見る度に思う。
読了日:11月14日 著者:宮部 みゆき
天体の回転について (ハヤカワ文庫 JA コ 3-3)天体の回転について (ハヤカワ文庫 JA コ 3-3)
小林泰三一気読み週間。「海を見る人」系統かと思いきや角川ホラー文庫の残滓を引き摺った中途半端な短編集。ハードSFとグログロホラーが融合しきれず斑に醜い姿をさらしている印象。元ネタを消化しきれない下手なパロディも鼻につく。「盗まれた昨日」は「盗まれた明日」の本案兼、自作の「垝憶」のセルフパロディなのだろうけれど、自我と記憶の扱いや解釈が中途半端過ぎて乗れない。一番面白かったのは「ブライキング」だったとはなんとも(^^;
読了日:11月16日 著者:小林 泰三
臓物大展覧会 (角川ホラー文庫)臓物大展覧会 (角川ホラー文庫)
軽いテイストの作品も多く「SRP」は「AΩ」続編としても通用する面白さなのだけれど、タイトルと装丁が読み手を選びすぎる。小林泰三一気読み週間でなければ手に取ろうとも思わないセンス。
読了日:11月17日 著者:小林 泰三
人造救世主 (角川ホラー文庫)人造救世主 (角川ホラー文庫)
9番目の改造人間が組織を裏切って闘うという設定は「サイボーグ009」であり、世界征服を目指す組織の怪人たちが戦闘員を率いて次々と襲いかかってくる展開は「仮面ライダー」でしかない。そこにタイムリーな「バルス」まで仕込んであるなんて、オタク心の擽り方が上手い。戦闘員がイエス・キリストとしか思えないところはサラッと流しておいて、ヒーロー役が実は「人類の敵」であったと言う持って行き方はオチとしては弱い。闘いの収束を待たず、「そこ」で終わっちゃうの……というのが正直な感想。
読了日:11月18日 著者:小林 泰三
ηなのに夢のよう DREAMILY IN SPITE OF η (講談社文庫)ηなのに夢のよう DREAMILY IN SPITE OF η (講談社文庫)
S&Mシリーズはは連作長編だと思っていたけれど、Vシリーズから雲行きがおかしくなり、四季シリーズでついに長大なサーガの存在が明らかにされた。Vシリーズ後半からGシリーズに入ってからは臆面もなく、一作ごと独立した作品というより全体世界の一片として提示されている様に思う。真賀田四季は既に生死を超えて遍在している。「女王」シリーズは明示的に取り込まれたが、どのような形で「スカイ・クロラ」を飲み込むのか興味深い。
読了日:11月19日 著者:森 博嗣
謎解きはディナーのあとで 2謎解きはディナーのあとで 2
ミステリ風味の頭の体操、ユーモア仕立て。影山の出自が一番の謎かもしれない。どう考えても執事にはむいていない性格。風祭警部側の視点から見た作品も読んでみたいところ。
読了日:11月24日 著者:東川 篤哉
家に棲むもの (角川ホラー文庫)家に棲むもの (角川ホラー文庫)
ホラーというよりグロに一直線の作風だけれど、まだまだ突き詰め方が足りない。「食」に焦点を結ぶには排泄も避けては通れない。生と性と死、食と排泄。もっと突き抜けた展開を期待するのだけれど、半端な落としどころに着地してしまう物足りなさ。
読了日:11月28日 著者:小林 泰三
イナイ×イナイ (講談社ノベルス)イナイ×イナイ (講談社ノベルス)
「α」を待たず「η」から本作へ移行。キャラクター紹介が済んだばかりだったので、丁度良かったかも。那古野から東京に舞台を変え、新キャラも沢山いるけれど馴染みの方々も多い。Gシリーズの海月の役割を担うのがバイトの彼氏なのか。横溝正史張りの古い閉鎖された館を舞台とする密室殺人という「探偵小説」の王道。浮き世離れしたお嬢様と身体障害を抱えた使用人。遺産相続にまつわるどろどろした人間模様。しかし、やっぱり森ミステリ。真賀田四季を頂点とする天才ピラミッドの中では、萌絵と保呂草氏は同レベルなのかな。
読了日:11月29日 著者:森 博嗣
キラレ×キラレ (講談社ノベルス)キラレ×キラレ (講談社ノベルス)
Gシリーズの完結を待たずにXシリーズを読み進む。小川さんの過去の事件が、どの時系列で「本編」に繋がってくるのか興味深い。保呂草氏と萌絵の接点については「捩れ」を再読する必要性を感じてきた。検索すれば森作品全体の時系列を整理して、タイムラインに並べてくれているサイトもあるのだろうけれど、これは各自で行うべき作業なのでしょう。柑橘系のくだりは、犯人が現場にいたことを自ら明かしてしまったという「在証明」ですね。親切な種明かしを排除して、読者に委ねる森スタイル。
読了日:11月30日 著者:森 博嗣

2011年11月の読書メーターまとめ詳細
読書メーター

平成23年10月の読書記録

10月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2025ページ
ナイス数:23ナイス

日の名残り (ハヤカワepi文庫)日の名残り (ハヤカワepi文庫)
相変わらずカズオ・イシグロは直接描写をせず、浮かび上がらせる手法が上手い。ミス・ケントンの言動を通して、語り手スティーブンスが彼女に相対しての態度を浮き彫りにする。語り手は明らかな嘘こそ吐かないけれど、自分から言い出したくないことは語らない。非常にリアルな語り方だ。そして背景のように描写されるのは貴族のお屋敷を執事が切り盛りしていた英国の一時代が終わりゆく風景。英国自体の夕暮れだ。語り手の一生と重ね合わせるように一国の一時代を描ききる。上手い作家だと思うことしきり。
読了日:10月07日 著者:カズオ イシグロ
玩具修理者 (角川ホラー文庫)玩具修理者 (角川ホラー文庫)
表題作「玩具修理者」のオチは早々に読み切れた。語り手と聞き手の関係性を男女関係に読ませようとする手管も、明らかなミスディレクションを誘う手つきが透けて見えた。しかし、それはホラーもしくはクトゥルフ・フォロワーとして読んだ場合。後の作品の後書きで、本作もナノ・マシンをテーマとしたハードSFだと言われたときにはぶっ飛んだ。一方「酔歩する男」はタイムトラベルがテーマなので、よりSFに近づいてはいる。でも、頭の中をいじくられる気持ち悪さは本作の方が上かもしれない。
読了日:10月08日 著者:小林 泰三
星を継ぐもの (創元SF文庫)星を継ぐもの (創元SF文庫)
星野宣之のコミカライズをきっかけにして原作版を読み返して見た。スケールの大きさ、テーマの重さ、まさにJ.P.ホーガン節。ただし、デビュー作らしい荒削りな点もまた目立つ。母星が粉々に砕けるような凄まじいエネルギーが加わりホーマン軌道とは思えない様なぶっ飛び方で惑星間空間を移動をする「それ」の上で生命維持が可能なのか、とっても疑問だ。しかし、怒濤の謎解きと感動的なエピローグに押し切られてしまうのだけれど(^^; 星野宣之版では原作にはない展開もみられ、要注目だ。
読了日:10月12日 著者:ジェイムズ・P・ホーガン
なぜあの人からつい「買ってしまう」のかなぜあの人からつい「買ってしまう」のか
実用心理学の実践用参考書。どかどかと52項目に渡るキモが列挙してあるので、サラッと読むだけではあまり意味がない。参照しつつ実行するべき本。
読了日:10月15日 著者:ケビン・ホーガン,ジェームス・スピークマン
ΑΩ(アルファ・オメガ)―超空想科学怪奇譚 (角川ホラー文庫)ΑΩ(アルファ・オメガ)―超空想科学怪奇譚 (角川ホラー文庫)
巻末の解説ではジェンダーやSF的視点から論じられている。切り口としては面白いけれど、作者の嗜好を汲むならばちゃんと「スプラッタ版ウルトラマン」だと本質を喝破してあげなくてはならないだろう。おまけに「貧弱ぅ貧弱ぅ」なんてジョジョのパロディも入れてある。相当なオタク小説だ。恒星を組み合わせた壮大な「機械」などハードSFとしての仕掛けも面白いけれど、本編中での扱いは薄い。影の本質が明らかにされない点も若干不満。
読了日:10月20日 著者:小林 泰三
海を見る人 (ハヤカワ文庫 JA)海を見る人 (ハヤカワ文庫 JA)
エマノンに勝るとも劣らず、表紙の勝利。この絵は大好き。数式そのままでは理解できないので、時計の中のレンズも内側と外側も、いちいち図解して絵に描いて考える。さらに全編共通の世界の断章だと考えて、長大な年代記を自分なりに描いてみる。マイクロブラックホールをレンズ型駆動装置の中央に置いた巨大都市型恒星間宇宙船。久遠の時間が過ぎるうちに科学は魔法と化す。粘液と内臓と眼球ぶちまけの小林泰三とは一転して透明感のある美しい話が多い。ことに表題作はそのまま鶴田謙二さんにマンガ化して欲しい。映像化が難しいことは解ってる。
読了日:10月28日 著者:小林 泰三

2011年10月の読書メーターまとめ詳細
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平成23年9月の読書記録

9月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:3334ページ
ナイス数:22ナイス

続巷説百物語 (角川文庫)続巷説百物語 (角川文庫)
再読。初読時には連作一作ずつの面白さにひっぱられ、全体の構成にまで思い至らず。読み返してみて、連作の1本ずつが「巷説百物語」の各話の間を埋めていくのみならず、連なって1本の壮大な巨悪との闘いになっていくサマにトリハダが立つ。読み進むうちに「敵のインフレーション」で士農工商ヒエラルキーを駆け上がり、ついにはひとつの藩丸ごとの存亡を賭けた大仕掛けに雪崩れ込む。それだけの巨悪を滅しても、実はその背後にはもっと巨大な黒幕がいたことが明かされ、しかも、その闘いは描かれずに後日談に繋がる。「最終決戦」が待ち遠しい。
読了日:09月06日 著者:京極 夏彦
後巷説百物語 (角川文庫)後巷説百物語 (角川文庫)
巷説百物語」と「続巷説百物語」はほぼ同時期、江戸時代が舞台。表立って登場する人物も士農工商の枠組みに収まっている者がほとんどだ。時代劇などで思い浮かべる「江戸」の風景だといっても良い。ただし、話の本幹を握るのは枠から外れた者たち、無宿人だったり人別から外れた者たちだ。しかし、又市ら枠組みから外れた者たちも、ちゃんと「江戸」には収まっている。しかし、本作において重要な役割を得る「奉ろわぬ人々」や「山の民」は表舞台にはほとんど現れない存在。妖怪に託して時代変遷や民族までも描こうとした空恐ろしい作品だと思う。
読了日:09月11日 著者:京極 夏彦
嗤う伊右衛門 (角川文庫)嗤う伊右衛門 (角川文庫)
初読時には「あの」四谷怪談だということばかりが頭にあって、御行の又市のシリーズであることさえ気にかけずに読み通した。今回、「巷説百物語」を読み返した後に、同シリーズとの関わりを念頭に置いて再読。初読の際には全く見逃していた又市の青さが痛々しい。また武家と町人さらには人別にない者のヒエラルキーについての流れが一連のシリーズと通底していることにも気付く。何よりも、匂いや音、更には刀の切れ味などの描写で、伊右衛門が行ったことを直接には描かずに浮かび上がらせる手法が凄い。終盤で伊右衛門が「嗤った」理由が切ない。
読了日:09月16日 著者:京極 夏彦
プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術
内容的には以前Web連載で読んでいたモノとほぼ同じ。合体ロボの例えは記憶に新しいところ。折角だから、ドリルダウンで掘り下げていく作業をロボットの「変形」に、現状と理想の乖離を明らかにして具体的な提案と結びつける作業を「合体」になぞらえて欲しかった。そうすれば形だけではなく機能からも「変形合体ロボ」であることに得心がいくはず。
読了日:09月21日 著者:永田 豊志
後巷説百物語 (角川文庫)後巷説百物語 (角川文庫)
読了日:09月24日 著者:京極 夏彦
覘き小平次 (角川文庫)覘き小平次 (角川文庫)
巷説百物語シリーズで時折断章として描かれていた又市が御行姿に身を窶し、治平を担ぎ出した際のエピソードがようやく描かれたと言うのが第一印象。さらに挿話としてあっさり語られていた薬屋とその養子を介して「嗤う伊右衛門」とも絡み合う。どこまで世界を構築した上で描き始めるのだろうか。又市の上方時代の悪たれ話もそのうち描かれるのだろうけれど、楽しみなのは江戸城の大きな鼠との死闘ということになるのか。その死闘で亡くなることが約束されている事触れの治平と語らない小平次が対峙し、それぞれの生き方を自ら定めるシーンが白眉。
読了日:09月27日 著者:京極 夏彦

2011年9月の読書メーターまとめ詳細
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2011年08月の読書記録

8月の読書メーター
読んだ本の数:12冊
読んだページ数:3188ページ
ナイス数:18ナイス

球形の季節 (新潮文庫)球形の季節 (新潮文庫)
るいすのマスターの挿話や石から出かけていたけれど引っ込んでしまった指。帰ってきてしまった母親など本流とは馴染みきれない枝葉のエピソードが多い様に感じた。本流の話では、男たちは旅立っていき、女は残って石を磨くのだろうか。主人公は新しい世代で、自在に彼方此方を行き来出来るようになってしまうのだろうか。さて、おばちゃんたちは常野に繋がる系譜なのかしらん。
読了日:08月01日 著者:恩田 陸
ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編 仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編 仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法
GTDと言う手法、概念を知ってから、手探りでいろいろとやって来た。手帳を使い、Evernoteを使い、Linoを使い、そして訳者・田口氏謹製のCheck Padは今も利用中だ。最近は有料アプリケーション+サービスのNozbeに落ち着いている。有料だから使い倒さなくてはいけないという気になることもさておき、「次の行動」をコンテキストや日時、場所など様々な断面で切り分けて、その場、その時で迷うことなく選択して実行することが出来る工夫が随所に見られるからだろう。垂直管理については再考。高度のアナロジーは微妙。
読了日:08月07日 著者:デビッド・アレン
知識ゼロからのビール入門 (幻冬舎実用書芽がでるシリーズ)知識ゼロからのビール入門 (幻冬舎実用書芽がでるシリーズ)
サクサク読ませるウンチク本。よなよなエールはお気に入りだったし、銀河高原ビールを初めとするヴァイツェンも大好きだったけれど、一番絞りやプレミアムモルツとの違いは良く分かっていなかった。体系だって製法や特色を解き明かされて、ますますいろいろなビールを呑んでみたくなった。国内各地の地ビール会社では「お試し」で安価なセットを通販してくれるところも多いので、手を出してみようと考えたきっかけになった一冊。
読了日:08月07日 著者:藤原 ヒロユキ
一番搾り<生>うまいものレシピ55品一番搾り<生>うまいものレシピ55品
コンテが軽妙で面白い。このCMは見てたわー、と地獄のミサワのような台詞が思わず出てしまう。レシピ集にもなっているが、当然ながらビールが呑みたくなる食べ物ばかりなので要注意。
読了日:08月07日 著者:
京極夏彦『巷説百物語』の世界―あやかし絵巻の妖怪&登場人物を徹底解析! (洋泉社MOOK―ムックy)京極夏彦『巷説百物語』の世界―あやかし絵巻の妖怪&登場人物を徹底解析! (洋泉社MOOK―ムックy)
「前巷説百物語」を読む準備として図書館で見かけた本書を読んでみた。人物相関は文庫本のおまけについてきた小冊子よりは詳細。インタビューも面白い。実写ドラマ版やアニメ版の記事には若干悶絶する。
読了日:08月07日 著者:
小説以外 (新潮文庫)小説以外 (新潮文庫)
あらま、波長が合ってしまう。読書に関する話題や書評が多く、また語り口が上手いので、取り上げられた作品を読みたくなってしまう。本作から何冊か抜き出して「読みたい本」リストを更新せねば。後は酒とつまみの話ですね。中島らもには惑わされなかったのに、本作のおかげで結構長期間続いた断酒モードから離脱して、晩酌解禁になってしまったのは内緒だ。
読了日:08月08日 著者:恩田 陸
ノート・手帳・企画書に使える!図解表現 基本の基本ノート・手帳・企画書に使える!図解表現 基本の基本
図の基本形を学ぶところから、実際に文章を図解する手順まで詳細にかつ解りやすく「図解」されている。 一連の「図解思考」の解説書で総論、基本を押さえた後、実際に活用する場合には本書が参考になる。基本は□と→でかなりの事象は図解化出来る。
読了日:08月09日 著者:飯田 英明
ほんの1分で一生が変わる魔法のかたづけ術 (PHPビジュアル実用BOOKS)ほんの1分で一生が変わる魔法のかたづけ術 (PHPビジュアル実用BOOKS)
概念から入る「断捨離」とは違い、個別ケースから片付けの仕方を指南する実用書。最終的には「使わないモノはどんどん捨てて、スッキリした空間をキチンと使いましょう」という結論は断捨離に通じてしまうのだけれど。原理はシンプルで、各論は細かく具体的な事例を挙げ、写真やイラストも豊富なので解りやすい。
読了日:08月09日 著者:小松 易
前巷説百物語 (角川文庫)前巷説百物語 (角川文庫)
若かりし日の又市が「巷説百物語」シリーズで読者が良く見知った「御行の又市」となるまでのお話。これまでの作品で又市が「殺さずに何とかする方策」を何とか捻り出そうとしていた理由や自分に関わりのある女性が死んでしまうことに対する強い拒否反応の理由(の一端)が解る。損料屋の面々も強烈に個性的なので、「前々」の「巷説百物語」が読みたくなってしまうのは仕方のないところ。最後に御行姿を又市に譲る形になった人物については、京極夏彦には珍しくあまりに都合が良すぎる設定だと感じた。否、そんなに珍しくはないか。
読了日:08月19日 著者:京極 夏彦
からだが変わる体幹ウォーキング (平凡社新書 466)からだが変わる体幹ウォーキング (平凡社新書 466)
キチンと立つこと、キチンと歩くこと、キチンと走ることは全て同じ原理原則を踏まえているという指導通り、以前読んだランニングの本と基本は同じ。新書である本書では画質、紙質に合わせて写真ではなくイラストが掲載されている。ちゃんと出版形態に合わせて、見やすさ、解りやすさを気にかけている点は高評価。
読了日:08月19日 著者:金 哲彦
「体幹」ウォーキング「体幹」ウォーキング
最近話題のBig Breathもお腹を引っ込めるDraw Inも眼目は体幹の深部筋肉を鍛えることにある。呼吸やStaticな運動だけではなく、歩くという能動的な運動が加わることにより前述の各種ダイエット法より効果的な負荷が得られるのではないかと期待。新書版に比べてビジュアルが多く、見て解りやすい。
読了日:08月23日 著者:金 哲彦
巷説百物語 (角川文庫)巷説百物語 (角川文庫)
「前巷説百物語」を読了したのを機に再読。驚天動地の大仕掛けや破天荒な超絶武器は登場せず、又市の口八丁や治平の演技力など、手作り感あふれる仕掛けが多く、ある意味安心出来る。ただ、又市が繰り返し「殺さず」を口にする割りに、仕掛けられた「敵」は「自滅」とはいえどほとんど死んでしまうので、「詐欺師による必殺シリーズ」的な印象が拭えない。後の作品で語られることになる又市の影や陰が既にキチンと描写されていることにも驚愕する。この長大なシリーズをキチンと細部まで設定してから書き始めているのだろうか。
読了日:08月27日 著者:京極 夏彦

読書メーター

2011年07月の読書記録

7月の読書メーター
読んだ本の数:8冊
読んだページ数:2783ページ
ナイス数:19ナイス

日本推理作家協会賞受賞作全集 75 (75) (双葉文庫 な 12-18)日本推理作家協会賞受賞作全集 75 (75) (双葉文庫 な 12-18)
やはりホームタウンデシジョンがあるのか、日本編ではバキリの恐ろしさ、得体の知れなさが急降下。舞台がアフリカのままだったら、最終決戦が軍隊蟻対住血吸虫になっていたかもしれない。抑制が効いた描写で寄生虫のくだりも伝聞もしくは記録を読んだだけなので、あまり生々しくなく拒否反応を示す読者は少ないだろう。文庫版解説は著者の娘さん。アル中のオヤジの娘さんということで、作中の教授とバナナのキジーツを重ねて読んでしまった。誤読。
読了日:07月26日 著者:中島 らも
日本推理作家協会賞受賞作全集 74 (74) (双葉文庫 な 12-17)日本推理作家協会賞受賞作全集 74 (74) (双葉文庫 な 12-17)
これは傑作。超能力や奇蹟と称するモノは全てマジックでも行うことが出来ると大上段に切って捨て、新興宗教や超能力少年のイカサマを暴き立てる。しかし、一方では高僧が「予知」をしていたり、超能力少年の力が甦ったりとイカサマならざる「力」の存在を仄めかしていく。下巻への期待が高まる間もなく一気読みしてしまった。
読了日:07月21日 著者:中島 らも
パズル・パレス 下 (角川文庫)パズル・パレス 下 (角川文庫)
早々に黒幕についての推理が当たりだったことが判明。ならば驚天動地の理由があるに違いないと淡い期待を抱くが、何とも狡い動機で残念感が募る。最後の手に汗握る攻防戦も鍵(パス・キー)があまりにも肩すかし過ぎる。まさしく「そんなに単純で良いのか?」だ。おまけに防壁が破られてしまっていては「漏れたのはわずかだ」では済まされない。少なくとも情報戦の専門家がそんな台詞を吐いてはいけないでしょう。
読了日:07月14日 著者:ダン・ブラウン
パズル・パレス 上 (角川文庫)パズル・パレス 上 (角川文庫)
荒削りで若いという印象。こいつが黒幕だろうと、早々にアタリがついてしまう。そして、きっと外れない。基本的に「天使と悪魔」や「ダビンチコード」と物語としてのほとんど構成は同じ。刺客に狙われて走り回る役と謎解きを担当する役が男女で別れている点を違いと捉えることは出来る。
読了日:07月11日 著者:ダン・ブラウン
女たちの遠い夏 (ちくま文庫)女たちの遠い夏 (ちくま文庫)
書かれていない部分がとても恐ろしい。万里子のトラウマになった子殺しの女は赤ん坊を水の中に浸けていた。万里子の母親、佐知子は「子猫を水の中に浸けて、じっと押さえた」のだ。語り手である悦子の足には良く縄が絡まる。悦子と万里子が最後に顔を合わせる場面では、悦子は縄を持っていることを語らない。万里子に「なぜ、そんなものを持ってるの」と尋ねられるまで、読者には縄を持って万里子に対峙している悦子の姿は伏せられている。そして、悦子の周囲では子供の絞殺事件が多数起き、悦子の長女である景子は縊死による最期を迎えている。
読了日:07月09日 著者:カズオ イシグロ
リスアニ!Vol.5.1「アイドルマスター」音楽大全 永久保存版 (Sony magazines ANNEX)リスアニ!Vol.5.1「アイドルマスター」音楽大全 永久保存版 (Sony magazines ANNEX)
マニア向けに良く練り込んだ内容になっている。すべての曲を押さえている訳ではないし、アイマス関連インタビューとしては珍しく釘宮さんを担ぎ出した割りにはミンゴスが抜けているなど、次への布石も抜かりない。アニメ版登場直前の予習復習には丁度良いムック。
読了日:07月09日 著者:
攻殻機動隊1.5 HUMAN ERROR PROCESSER (KCデラックス (2453))攻殻機動隊1.5 HUMAN ERROR PROCESSER (KCデラックス (2453))
枝葉の短篇、掌編が数本とイラストが少々。意外に目玉となるのが原作者自らアニメのために書き起こしたシノプス……と言うところか。一冊の本としては、とても雑多で「落ち穂拾い」的な印象が拭えない。まさに「1.5」としか呼称せざるを得ない内容。逆に士郎正宗フリークとしては手元に置かざるを得ない希少本かも。表紙イラストに少佐が描かれていないのは象徴的。
読了日:07月08日 著者:士郎 正宗
人形館の殺人 (講談社文庫)人形館の殺人 (講談社文庫)
この「トリック」は食傷気味。数多のバリエーションはあれど、読んでいるうちに気付いてしまうことが多く、興醒めとなることが多い。本作もシリーズ中の異色作ということで辛うじて許されているキライあり。人形が上手くいかされていないため、「人形館」である必然性を感じられない点も辛い評価になる。京極夏彦の剥製ばかりの館もやはり似たような評価になった。
読了日:07月04日 著者:綾辻 行人

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