平成23年9月の読書記録

9月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:3334ページ
ナイス数:22ナイス

続巷説百物語 (角川文庫)続巷説百物語 (角川文庫)
再読。初読時には連作一作ずつの面白さにひっぱられ、全体の構成にまで思い至らず。読み返してみて、連作の1本ずつが「巷説百物語」の各話の間を埋めていくのみならず、連なって1本の壮大な巨悪との闘いになっていくサマにトリハダが立つ。読み進むうちに「敵のインフレーション」で士農工商ヒエラルキーを駆け上がり、ついにはひとつの藩丸ごとの存亡を賭けた大仕掛けに雪崩れ込む。それだけの巨悪を滅しても、実はその背後にはもっと巨大な黒幕がいたことが明かされ、しかも、その闘いは描かれずに後日談に繋がる。「最終決戦」が待ち遠しい。
読了日:09月06日 著者:京極 夏彦
後巷説百物語 (角川文庫)後巷説百物語 (角川文庫)
巷説百物語」と「続巷説百物語」はほぼ同時期、江戸時代が舞台。表立って登場する人物も士農工商の枠組みに収まっている者がほとんどだ。時代劇などで思い浮かべる「江戸」の風景だといっても良い。ただし、話の本幹を握るのは枠から外れた者たち、無宿人だったり人別から外れた者たちだ。しかし、又市ら枠組みから外れた者たちも、ちゃんと「江戸」には収まっている。しかし、本作において重要な役割を得る「奉ろわぬ人々」や「山の民」は表舞台にはほとんど現れない存在。妖怪に託して時代変遷や民族までも描こうとした空恐ろしい作品だと思う。
読了日:09月11日 著者:京極 夏彦
嗤う伊右衛門 (角川文庫)嗤う伊右衛門 (角川文庫)
初読時には「あの」四谷怪談だということばかりが頭にあって、御行の又市のシリーズであることさえ気にかけずに読み通した。今回、「巷説百物語」を読み返した後に、同シリーズとの関わりを念頭に置いて再読。初読の際には全く見逃していた又市の青さが痛々しい。また武家と町人さらには人別にない者のヒエラルキーについての流れが一連のシリーズと通底していることにも気付く。何よりも、匂いや音、更には刀の切れ味などの描写で、伊右衛門が行ったことを直接には描かずに浮かび上がらせる手法が凄い。終盤で伊右衛門が「嗤った」理由が切ない。
読了日:09月16日 著者:京極 夏彦
プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術
内容的には以前Web連載で読んでいたモノとほぼ同じ。合体ロボの例えは記憶に新しいところ。折角だから、ドリルダウンで掘り下げていく作業をロボットの「変形」に、現状と理想の乖離を明らかにして具体的な提案と結びつける作業を「合体」になぞらえて欲しかった。そうすれば形だけではなく機能からも「変形合体ロボ」であることに得心がいくはず。
読了日:09月21日 著者:永田 豊志
後巷説百物語 (角川文庫)後巷説百物語 (角川文庫)
読了日:09月24日 著者:京極 夏彦
覘き小平次 (角川文庫)覘き小平次 (角川文庫)
巷説百物語シリーズで時折断章として描かれていた又市が御行姿に身を窶し、治平を担ぎ出した際のエピソードがようやく描かれたと言うのが第一印象。さらに挿話としてあっさり語られていた薬屋とその養子を介して「嗤う伊右衛門」とも絡み合う。どこまで世界を構築した上で描き始めるのだろうか。又市の上方時代の悪たれ話もそのうち描かれるのだろうけれど、楽しみなのは江戸城の大きな鼠との死闘ということになるのか。その死闘で亡くなることが約束されている事触れの治平と語らない小平次が対峙し、それぞれの生き方を自ら定めるシーンが白眉。
読了日:09月27日 著者:京極 夏彦

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