2009年12月の読書記録

12月の読書メーター
読んだ本の数:10冊
読んだページ数:3001ページ

終末のフール (集英社文庫)終末のフール (集英社文庫)
小惑星の衝突というベタな原因による世界の終末。当然、伊坂幸太郎なので普通の展開にはならない。ベタな終末もので描かれがちなパニックが過ぎ去った後の小康状態を得た世界を淡々と描いていく。世界の滅亡という大上段なテーマ掲げているはずなのに,描かれるのは淡々とした日常。読み進んでいる最中は「ガール」が巡り会った男の子は誰なんだろうとか、細かいところに引っ張られて、大事なところを見逃している気がしてならなかった。我が心の師たる大人げない方は、この終末でも語っているのでしょうか。
読了日:12月03日 著者:伊坂 幸太郎
εに誓って (講談社文庫 も 28-43)εに誓って (講談社文庫 も 28-43)
ネタバレ自重で多くは記さないが、やっぱりいつもの森博嗣トリック。真賀田四季は別格として、海月と犀川も天才の系列として描かれているが、実は佐々木睦子叔母が侮れないと感じる今日この頃。萌絵よりは確実に視野が広い気がしてきた。真賀田四季と対決するのは紅子がふさわしいと思うのだが、既に表舞台からは退いているのか。犀川がダークサイドに引き込まれそうになった際に真打ち登場という感じで再登場してきたりするのか。ちょっと期待したりしている。当然、森博嗣は,そんな読者の期待を軽々と裏切ることも織り込み済みだけれど。それにし
読了日:12月05日 著者:森 博嗣
この世界の片隅に 上 (1) (アクションコミックス)この世界の片隅に 上 (1) (アクションコミックス)
掌編「冬の記憶」から物語はスタートする。主人公すずの幼少期の白昼夢のようなお話。人さらいにさらわれて、晩ご飯にされてしまうと聞きながら「おつかいやってお土産買うて」帰らないといけないから困ったなんて言う、どこかずれているすずの世界観に引き込まれてしまい、そのまま作中世界にどっぷり。ザシキワラシも身近に居て違和感がない。むしろ、「いやかどうかもわからん人」に請われて、全く見ず知らずの家に嫁に行くという「当時の当たり前」の方に違和感を感じてしまう21世紀。それでも、「今」と地続きなのだと感じてしまう生活が淡々
読了日:12月06日 著者:こうの 史代
この世界の片隅に 中 (2) (アクションコミックス)この世界の片隅に 中 (2) (アクションコミックス)
義理の姉も意地悪なばかりではなく、ちゃんと自分の人生を生きている。夫・周作も真面目な堅物とばかりも言えず隠された過去もある。それぞれに自分の日常を生きている。遊郭に生きるリンさんにも物語はある。楽しい物語ばかりではないはずだが、周囲を見るすずのまなざしは柔らかい。周囲が思うほど穏やかではなく、ハゲが出来たり「代用品」について思い悩んだりはするのだけれど、それもすべて精一杯生きるすずにとっての日常。そんな淡々とした日常の中に、兄の戦死や空襲のエピソードが入り込んでくる。ともすれば、すずと一緒に笑い,悩みなが
読了日:12月09日 著者:こうの 史代
この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)この世界の片隅に 下 (アクションコミックス)
通読した後に表紙を見て思わず泣きそうになる。カバーの折り返しをめくり、帯までとって,見て、さらに泣きそうになる。表紙のすずは髪が短い。今まで綴られてきた物語と地続きであるが故に、更に辛い時がやってくる。「あの広島」そのものではなく、周辺でさえ、さらに辛い物語がある。辛くても,泣いても,落ち込んでもすずは歩き続ける。おかげで私たちも,私たちの時を歩いて行くことが出来たのだと思う。すずは「冬の記憶」で一緒に人質になった少年のことを思い出したのだろうか。ザシキワラシや人さらいのバケモノの正体に気付いたのだろうか
読了日:12月10日 著者:こうの 史代
フィッシュストーリー (新潮文庫)フィッシュストーリー (新潮文庫)
仙台は身近な都会だ。けれども不思議と憧れや住みたいという気分が湧いてこないところだ。仙台、水戸、名古屋という日本三大○○産地の筆頭にあげられているからではないはずだ。都会だけに秋田美人も津軽美人も実際は地元に埋もれることなく身近な都会たる仙台の方に多く生息している。本書をはじめとする伊坂幸太郎作品を読むと、作中の仙台にだったら住んでも良いかな、と思ってしまう。そこはいぶりがっこねぷた/ねぶたから逃れた美人が住まう土地ではなく、人の心が分からず扉や壁を無視する黒澤氏や喋る案山子がいるところなのだけれど。
読了日:12月11日 著者:伊坂 幸太郎
シュレディンガーのチョコパフェ (ハヤカワ文庫JA)シュレディンガーのチョコパフェ (ハヤカワ文庫JA)
習作集なのだと思った。先日、劇場版「マクロス・愛おぼえていますか」を観る機会があった。当時は最高峰だと感じた作画と動き。しかし、現時点で観てしまうと、キャラクターの顔のデッサンは狂っているし、動きも古めかしい。この20年という時の流れにめまいがする思いをした。本短編集表題作の原型が丁度「愛おぼえていますか」の時代だと言うのだから、細かい点でのアラの目立ち方は致し方ないのでしょう。コンセプトやプロットをほとんど変えることなく現代の作品としてしまったことを褒めるべきかも。巻末作品は触手による少女陵辱ものだし。
読了日:12月17日 著者:山本 弘
闇が落ちる前に、もう一度 (角川文庫)闇が落ちる前に、もう一度 (角川文庫)
寄せ集めの感がぬぐえない短編集。表題作は人間原理世界創造もの。これはまっとうなハードSF。短い枚数の中にSF的展開の面白さと愛するべきものの存在さえ疑わしくなってしまった世界観の絶望を上手く織り込んでいる佳作。中二作はまごうことなきホラー。「屋上にいるもの」は読み進めると、途中から脳内で鈴木光司仄暗い水の底から」と重なってしまって仕方なかった。「夜の顔」はホラーもしくは不条理ものの体裁をとっているけれど、実は「神は沈黙せず」に通底する思想を内包している。上位者は人間が理解できる行動をとるとは限らない。「
読了日:12月22日 著者:山本 弘
神は沈黙せず〈上〉 (角川文庫)神は沈黙せず〈上〉 (角川文庫)
非常に大きく風呂敷を広げた感があり、わくわくしながら読み進めることが出来た。UFO体験を扱ったSFとしては瀬名秀明「BRAIN VALLEY」という非常にハードな良作が先達としてあり、これを超えられるか、少なくとも並び立つところまで行けるかとても楽しみなところ。若干気がかりだと思ったのはウェブの網のような嘘情報が目立ってしまうこと。大量の情報でペダントリックに畳みかけてくるのは良いけれど、大量の裏付けのある情報や科学的事実の中に、見え見えの嘘情報を紛れ込ませてしまったのはいかがなものかと感じた。紛れ込んだ
読了日:12月29日 著者:山本 弘
神は沈黙せず〈下〉 (角川文庫)神は沈黙せず〈下〉 (角川文庫)
広げすぎた大風呂敷を畳んでみたら、意外と小さく収まってしまった、と言う印象。悪のカリスマとして描かれた加古沢黎が、思いの外小物でがっかり。どうせなら悪の首領として高々と君臨し、主人公たちに辛酸を嘗めまくらせた後に叩きつぶせばカタルシスも倍増するだろうに、所行、処遇ともにあっさり風味。強引に人間賛歌っぽく話を収めてみました的展開だけれど、所詮2ちゃんねるで言うところの「イイハナシダナー 」になってしまっている。既存の宗教が崩壊し、国や経済体制もぐちゃぐちゃになっているのはまだしも、物理法則までわやくちゃに
読了日:12月31日 著者:山本 弘

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