2009年06月の読書記録

6月の読書メーター
読んだ本の数:7冊
読んだページ数:2800ページ

陰陽師―瀧夜叉姫〈上〉 (文春文庫)陰陽師―瀧夜叉姫〈上〉 (文春文庫)
登場人物紹介と伏線張りに終始するはずの上巻なのに、既にエンターテイメント性全開だ。登場人物が多過ぎて、しかもみんな源平なので歴史に疎い私は混乱することしきりだったのだけれど、読み進めるうちに自然と人物像、配置が理解出来るようになっている不思議。キャラが立っているということか。この時代、この人物たちに囲まれて、ラスボスとして出てくるとすれば「彼」か…と思っていたら、期待を裏切らず堂々の登場。その興奮のままに下巻に雪崩れ込むのであった。その昔々のSF大会、エゾConで大浴場の浴槽に投げ込んだ狼藉が心から申し訳
読了日:06月28日 著者:夢枕 獏
チャイルド44 下巻 (新潮文庫)チャイルド44 下巻 (新潮文庫)
上巻と打って変わって、下巻はノンストップ・アクションの様相を呈する。ハリウッド映画化の話も持ち上がろうというのも納得の展開だ。連続殺人犯の正体も早々に明かされてしまい、動機も薄々検討がつくのでミステリとしての意外性には乏しいのかな…と甘く見てしまった。ところがどっこい、意外な「真相」は全く思っても見なかった方向からやってくるのであった。
読了日:06月25日 著者:トム・ロブ スミス
人とロボットの秘密人とロボットの秘密
ロボットに関しての本というと、ついついメカトロニクス関係かと思ってしまう。ところがどっこい、本書は「ロボットの意識」に関しての本でありました。ちょっとびっくりしたけれど「デカルトの密室」からの流れで購入したことを考えるとむべなるかな。多くの研究者が登場し、いろいろな学説、研究テーマが取り上げられる。大まかな流れとしては、心身二元論に基づいた独立した「意識」は存在し得ない。身体もしくは身体感覚が意識を作り上げる。従って、人間の身体や動作について研究するためだけではなく、感覚や意識を研究するためにもロボットは
読了日:06月23日 著者:堀田 純司
チャイルド44 上巻 (新潮文庫)チャイルド44 上巻 (新潮文庫)
1933年から始まり、メインの舞台は1953年のソヴィエト連邦。隣人も同僚も家族も誰も何も信じられない重苦しい世界。動物農場や華氏華氏451などで寓話的に描かれた世界が、リアルに逃げ出しがたい形で周囲を取り巻く。読者は主人公とおぼしきレオとともに、この世界に投げ出され読み進めるという形で生きていくしかない。猟奇殺人という「こっち」の世界では一番避けたい非常事態が、何故か一種の救いに思えてしまうくらいの閉塞感。上巻を読了して、ほっと一息。下巻にカタルシスはあるのだろうか。
読了日:06月17日 著者:トム・ロブ スミス
凍りのくじら (講談社文庫 つ 28-5)凍りのくじら (講談社文庫 つ 28-5)
読書メーター」や「メディアマーカー」のヘビーユーザーなら理帆子に同調する部分がきっとある。本作を読みながら抜き書きした心に響いた文章は、ほとんど「読書と頭の良さ」に関する理帆子の独善。すなわち「読書習慣を持つ人の傲慢」に関するものだ。酷いこと言うな…と思いながら、自分の内にも似たような感興がないとは言えない。しかし、最後まで読み通して自己防衛の隠れ蓑として身に着けた傲慢さから成長していく瞬間を描いた作品だと感じた。ミステリではないけれど、伏線は綺麗に回収されているし、メイントリックはやっぱり辻村作品でお
読了日:06月11日 著者:辻村 深月
数学で犯罪を解決する数学で犯罪を解決する
サイモン・シンの事実に基づいたドキュメンタリータッチのノンフィクションとは味付けを異にした、一風変わったノンフィクション作品。数学がどのようにして犯罪捜査に用いられるのか、アメリカのドラマをモティーフにして解説する。ドラマがモティーフなので肩肘張らずすらすら読めるが、ドラマ自体も考証がしっかりしているので、割ときちんとした数学的論証が勧められる。扱われる数学的内容は結構多岐に渡っているが、どうしても確率論、ネットワーク理論が中心になるのは仕方ないところ。これで興味を惹かれた分野があれば、どんどん突っ込んで
読了日:06月07日 著者:キース・デブリン,ゲーリー・ローデン
エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)エンジン・サマー (扶桑社ミステリー)
「ディファレンシャル・エンジン」のようなハードSF作品を期待していたのに、これはなんとファンタジーではないか。と、この時には思い込んでおりました。読み進めているうちに実は現実の「この世界」と地続きの世界であることが透けて見えてくる。だけれど、まさかアニメ的な「あの世界」に繋がってしまうとは思いもよらなかった。世界についてのあれこれは分かっても、人間の心に付いてはわからない。ワンスアデイが主人公を拒絶した理由については結局最後までトンと思いつかないままでした。強烈な拒否の台詞、二度と合わないという最後通牒
読了日:06月01日 著者:ジョン クロウリー

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