平成24年02月の読書記録

2月の読書メーター
読んだ本の数:6冊
読んだページ数:2208ページ
ナイス数:27ナイス

狐火の家 (角川文庫)狐火の家 (角川文庫)
タイトルからは「黒い家」系の匂いを感じたけれど、実は「硝子のハンマー」の続編でありました。解説子のおっしゃるような怖さは微塵も感じず、純粋に密室にまつわるパズル感覚で読み進めることが出来た。これは短編であるが故かまたは作者の意図的にか、犯人や被害者に関する掘り下げがほとんどなくステレオタイプな描き方をされているところが大きい。また、密室の謎が解けることが「誰がやったか」もしくは「何故やったか」の解明に直結しているストーリーになっているため、謎が解けた際のすっきり感も大きい。結構楽しく一気に読了しました。
読了日:02月01日 著者:貴志 祐介
きつねのはなし (新潮文庫)きつねのはなし (新潮文庫)
愛すべき「乙女」や「先輩」たちが住まうところと地続きだとはとても思えない「魔界」としての京都が妖しくも怪しく描き出される。確かに京都と聞いて思い浮かべるイメージの一端には、長い歴史に伴ってそこここにわだかまる闇もまた当然ある。明るくライトアップされ観光客がそぞろ歩く通りから、ひとつ折れて路地をたどっていくと「乙女」たちが歩いた不思議な裏道もあるし、本作で語られるような隘路に至る場合もある。全てを語りすぎない語り口も本作には良く似合っている。殊に「魔」の〆が鮮やか過ぎる。七尾美佳が勝ったと思うのだけれど。
読了日:02月03日 著者:森見 登美彦
中庭の出来事 (新潮文庫)中庭の出来事 (新潮文庫)
街中の、外壁に囲まれた、建物の、中庭の、その中で起こる出来事。 ちょうど「劇中「劇中「劇中「劇中」のこと」のこと」のこと」みたいに、小説の構造も、描かれる事件も、舞台劇を仕掛けとして入れ子構造になっている。更に全てを解き明かす存在だと目された人物さえ、最後の最後に「登場人物でしかない」と高々と歌い上げてしまう潔さ。恩田陸は侮れない。
読了日:02月10日 著者:恩田 陸
的を射る言葉 Gathering the Pointed Wits (講談社文庫)的を射る言葉 Gathering the Pointed Wits (講談社文庫)
ちょっと上の世代。マンガ描きから理系研究者になり准教授まで上り詰め、遊ぶための資金作りのためと称して小説を書き、売れっ子作家になってしまった森博嗣の全体像はなかなか掴みきれない。発想は理路整然としている癖に、わざと予想外の切り口を提示してくる。それはミステリの作法でもあるけれど、森博嗣の基本的発想パターンでもあるのかもしれない。膨大なWeb日記もつまみ食いするだけではなかなか全貌に迫れない。まずは本作から切り込んでみよう。と、思って購入したわけではありません。
読了日:02月13日 著者:森 博嗣
文庫版  妖怪の理 妖怪の檻 (角川文庫)文庫版 妖怪の理 妖怪の檻 (角川文庫)
後半に掲載された講演の内容を徹底的に学術的に突き詰めた論述書。言葉の定義から概念の詳細に切り込んでいく。手法としては丁寧に文献を読み込み、膨大な傍証を積み上げていくパターン。まさに京極堂が事件について調べ、真相を喝破していく姿に似ている。言葉は世に連れ人に連れ時々刻々変化していく。西尾維新の「物語」シリーズがアニメ化されヒットしてしまった現在、アニメでは具体的な事物として描かれてしまった「怪異」がモノとして捉えられてしまうのも致し方ない。本作で論証された「妖怪」がたどったのとまた同じ道筋。
読了日:02月24日 著者:京極 夏彦
オワスレモノ (光文社文庫)オワスレモノ (光文社文庫)
日常系ホラー。表題作や冒頭の一作などは禍々しい雰囲気満点の作品だけれど、そんな中に怪異を扱ってはいるものの「ほのぼの系」の作品が紛れ込んでいる辺り作者の曲者ぶりをうかがわせる。12月29日であんなに大ごとになるのだったら、02月29日生まれの人はどんな波瀾万丈なのでしょうか。
読了日:02月27日 著者:加門 七海

2012年2月の読書メーターまとめ詳細
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